遠くを臨む


学生の頃や20代の頃、わりと最近まで、旅行が苦手でした。
おそらく、旅行といえば修学旅行が思い出として色濃く、
集団行動が苦手だった私にとって、乗り切るのが大変だったからなのでしょう。
そして、「いつもの風景の中で自分なりの視点を切り取れるようになりたい」と、
そんなテーマを掲げて写真と長年向き合っていた為か、
日常を離れた場所で何かと出会う事に、魅力を感じていなかったのです。
新しい場所に行けば新しい景色にシャッターを切りたくなる。
でも、それでは独自の目線を獲得できない、とか、
なんて生真面目風な思い詰め方をしてたんだろうと、
その頃の自身を(今思えば、ですが)ちょっと笑えてしまうほど。


「どこかへ行き、写真を撮りたい」というモチベーションが高ぶっていてたこの一年、
その想いに常に駆られながらわくわく色んな場所に出かけていたなと、
今年を振り返りながら、旅が苦手だった自分をふと思い出して、とても信じられないなぁと思ったのです。


どうして変化したのだろう。


たぶん、写真だけではない、大切な事を大事に紡ぐ生き方を編み出す為に、
様々な視点やアイデアや実感を求めるようになったから。
その一つの方法として「日常を離れた遠くへ行く」のが、有効で自然だった。
のかもしれません・・・


そして、旅を重ねてから気付いたもう一つ。
いつもの生活サイクルから環境を変えてみると、日々、何をどのように感じ、行動に結びついているか、
別の視点で捉える事ができると知り、その必要があったんだなぁ、という事。
日常を変えたいと、どこかで思っていた自分を知る事になったのです。
始る前にはわからないけれど、帰ってくると、予想もしなかった新しいアイデアが心にある。
旅の醍醐味とは、こういうコトなのかなぁと、ぼんやりと思いました。


そしてもう一歩踏み込んでみれば、旅への動機はいつも写真と共にあり、
大きな前提になっている事は、ずっと変わらないのです。
伝えたい事象や人々の物語がある場所へ導かれ、ファインダーに収める。
伝える事が役割で、そうありたいと、ますます思う師走です。